Kené #3:シピボのシャーマンによる刺繍


植物の “Kené”= 植物が教える治療歌の楽譜


 

熟練のシャーマンにはセレモニー中に音楽がみえます。

“Kené(クヌー)” はデザインであり音楽です。2:47 

エルマー・イヌマ・ペゾ 

アヤワスカを摂ると植物が歌で語りかけ人間を治癒すると言われている。だから本物のシャーマンは伝えなければいけないのです。植物の旋律(メロディ)を…  1:26 

アルマンド・セラノ・アルバレス

 

 

シピボ族のシャーマニズムを理解する上で、最も重要な概念のひとつ

それがKené(クヌー)です。

 

http://nativesoon.com/shipibo/ のページでは、Kené(クヌー)とは、命あるすべてのものに宿るエネルギーのパターンであると説明しました。

 

このKené(クヌー)について、シピボ族のビジョナリーアーティストのエルマーは、

Kené(クヌー)とは、熟練のシャーマンがアヤワスカの儀式中にみている音楽であるという表現をしています。

 

一方、NATIVE SOONの師匠であるアルマンドは、アヤワスカを摂ったときに植物が語りかける旋律(メロディ)を伝えることが、本物のシャーマンの役目だと語っています。

 

つまり、熟練のシャーマンは、アヤワスカを飲むと自身が修行した植物が伝えるエネルギーパターンを旋律(メロディ)として認知して、治療歌・イカロを即興演奏しているのです。

 

これらのことを総合すると、シャーマンがアヤワスカのセレモニーみる植物のKené(クヌー)とは、植物が教える治療歌の楽譜であると考えることができます。

 


女性シャーマンが表現するKenéの意義


 

皆さんの中には、シピボ族の泥染の布や刺繍をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、あの布に描かれる幾何学模様こそが植物がもつエネルギーの構成図=Kené(クヌー)を具現化したものです。

シピボ族の女性は、「piri piri (ピリピリ)*1)」の根の汁を点眼して見えるPiri Piriの「Kené(クヌー)」を刺繍にしたり、自らの身体に描いたりする伝統を持っていました(上記写真参照)。

 

しかし近年、海外でこのKené(クヌー)を描いた布の人気が急速に高まったため、「実際にみた植物のKené(クヌー)」を刺繍することより、デザイン的要素を重視するビジネスとしての側面が強くなっているといいます。

 

そこで、植物が伝えるKené(クヌー)を理解するうえで重要なのが、実際にKené(クヌー)をみている「女性シャーマンが描くKené(クヌー)」の刺繍なのです。

 

 


熟練のシャーマン・イーダのKené


 

Ida Ramos Huaita、通称「ママ・イーダ」は、サンフランシスコ村*2)に住む熟練シャーマンであり、素晴らしいアルテサニア(手工芸品)の作り手です。

 

彼女は、カナチュアリ*3)・チャイクニラウ・ピリピリをはじめ、多くの薬用植物を修行し、その使用法を熟知しています。

Kené(クヌー)をデザインするイーダ

 

さて。ここでイーダからKené(クヌー)のアルテサニアをみせてもらったキー坊の日記を覗いてみましょう。

イーダのアルテサニアを見る。
カマロンガ、カナチュアリ、チャイクニラウのクヌーの刺繍を見せてもらう。
これがカマロンガ、カナチュアリ、チャイクニラウのイカロの楽譜か… 

イーダによるカナチュアリのKené

イーダがチャイクニラウの刺繍を持ってくる。

刺繍に手を当ててチャイクニラウのイカロを歌うと、歌と連動して布地のクヌーが光り輝いて、歌っているクヌーの部分が光って浮き上がる。
凄いものを見たな。見てしまった。本当に目の前でイカロと連動してクヌーが浮き上がる。動く。

イーダによるチャイクニラウのKené

 

シャーマン自身によって描かれたKené(クヌー)とは、薬用植物が語りかけてくるエネルギーのパターンを具現化したものであり、特別な力を宿しています。

 

もしシピボ族の女性シャーマンと出会う機会があれば、彼女が描くKené(クヌー)のアルテサニアをみせてもらうことをオススメします。そして必ず、こう尋ねましょう。

 

これはなんという植物のKené(クヌー)ですか?

どのようなイカロ(治療歌)なのか、歌ってくれませんか?

 

これは、そのシャーマンがどのような植物を修行してきたのかを知るための大切な質問でもあります。もしあなたの中にも、植物のエネルギーが充満していたら、カマロンガを修行中のキー坊におこったような体験ができるかもしれません… 

 

 

1) Piri Piri(ピリピリ=シピボ名):学名は Cyperus articulatus。全長100-250cm前後で細長く、わけぎのような外見をしている。ピリピリには様々な種類が存在しており、香水・点眼し幻覚作用をもたらす・友愛をもたらす など、種類と目的に応じた多様な使用方法がある。

 

2) サンフランシスコ村:プカルパから、3輪バイクとボートを乗り継いで片道約1時間程度の集落。多数のアヤワスカセンターが運営されている、アヤワスカ・カルチャーの発信地のひとつ。

 

3) カナチュアリ(シピボ名):学名は、Brugmansia。シピボのシャーマンには、Toé(トエ)という呼称もよく知られている。日本名は、木立朝鮮朝顔。“Angel Trumpets(天使のトランペット)の愛称で知られている南米地域では、ブラジル・ペルーの熱帯雨林流域に多く生育する全長2-3mの低木*。幻覚成分であるアルカロイドを含むため、南米の熱帯雨林地域の原住民によって、儀式用に用いられてきた。

シピボのシャーマンは、浄化や毒消しを目的に葉っぱの部分を使用するが、幻覚作用が極めて強力なため、修行の際にはひとりで篭ることが重要だという。

*橋本梧郎氏 ブラジル産薬用植物データベース より

Brugmansia(木立朝鮮朝顔)