NATIVE SOONがプロデュースするプカルパ近郊での3週間ディエタ体験を終えた梶 智就さんが、体験中に使用した教科書(原文:英語)の一部を翻訳してくれました。
参照:ディエタとは http://nativesoon.com/blog/1785/
🌱 体験者・翻訳者のプロフィール 🌱
梶 智就:(アルバータ大学生物科学研究科・博士研究員)
研究の過程で偶然シピボ族のシャーマニズムに出会い、以来関心を持って調べ続けている。
個人ウェブサイト:https://sites.google.com/site/tomonarikaji/
梶さんがディエタ体験の中で使用した教科書は、偉大なシャーマン・ムラヤであったオリビア、ベヘタリスタのマルコスなどオリビアの親族にあたる多数のヒーラーたちの教えを元に編纂され「Sambo Kushi Ayahuasca Retreat 02/06/2018(原文:英語)」としてまとめられたものです。
参照:ヒーラー紹介 http://nativesoon.com/blog/1898/
一族に伝わる知恵の一部を教科書としてディエタ体験者にも共有することで、ディエタ中の学びを円滑に進めることを目的としています。(写真下:オリビアの甥のマルコス。一族の伝統を多くの人びとに伝えている)

梶さんによって翻訳された本教本の内容は、① シピボ語用語集 ② イカロ 日本語訳 ③ 植物リスト ④ディエタとは から成り、
「Sambo Kushi Ayahuasca Retreat 02/06/2018(原文:英語)」の抜粋内容をベースに、梶さんが現地での学びを通して聞き取った内容を加筆して作成されています。
本ブログでは、翻訳された教本内容のうち、①シピボ語用語集(日本語対応つき)を紹介します。
イカロの歌詞としてシャーマンが使用する重要な用語が多く含まれています。本用語集から、セレモニー中にシャーマンがどんな言葉を使って浄化をするのか、想像できるのではないでしょうか。
植物のシピボ名についても、本用語集で確認するとより役立つでしょう。例えば、オリビが愛したというプラント・マエストロの「ニウ・ラオ」は、以下の用語集から「風の特性で治療するプランタ」だということがわかるはずです。
ヒーラーたちが監修したシピボ語用語集
▼あ
▼い
| イラ ブワイ |
私の歌の言葉を通じて・・・
通例、行動を示す言葉に前置される。
例:カノ イラ ブワイ ー 私の歌の言葉を通じてあなたに繋がる |
▼う
▼お
| オナンヤ |
シャーマン。視覚や触覚で患者を診断する能力をもつ人間を指す。文字通りの意味だと、「知恵を持つもの」の意。 |
▼か
| カノ |
道、植物の世界との繋がり、道を行くこと、繋がること |
▼き
▼く
▼こ
▼さ
| サンクン |
美しい(「スイ」よりも美しさの度合いが下がる) |
▼し
| シナン |
思考(例:リオス スン シナマン ー 神の精神、考え) |
▼す
▼そ
▼た
▼ち
▼つ
▼て
▼と
▼な
▼に
▼ぬ
| ヌトゥ |
精霊の世界、植物の世界、患者の世界、ビジョン |
▼の
▼は
| パウ |
苦い、アヤワスカの味、マリエーション(儀式で植物の力を得た状態) |
| パリ |
未来の意図を示している(今からやるぞ、の意) |
▼ひ
▼ふ
▼ほ
| ボキンラ |
取り去る (クヨ、ソワ、ピシャ、チョロ、チョカなどの語に対する接続詞として使われる) |
| ホニ |
人々、〜の人々(例:ホニ ソワワ ー ピュアな人々) |
| ポントゥ |
真っ直ぐにする、真っ直ぐに植物の世界と繋がる、強くなる |
| ポントゥバン |
今もいつまでも繋がっている、真っ直ぐである |
▼ま
| マヤ |
悪い振動、悪いオーラ、悪い渦巻き (派生語としてマヨンバンなどがある) |
▼み
▼む
| ムラヤ |
動物に変身、瞬間移動、遠隔透視能力などを持つとされる最高位シャーマンの階級名 |
▼め
▼や
▼ゆ
▼よ
▼ら
▼り
▼る
▼れ
▼ろ
▼わ
| ワプロニビ |
〜に辿り着いた(例:ナイ ワプロニビー 天国に辿り着いた) |
| ワンパ |
風のなかで周期的に動く植物の動きの名前。踊り、波、サイクル |
文法に関する法則:接尾語について
| −ボ |
ボで終わる言葉は複数形である。例えば、ヨラボ(複数の体)、ヌトゥボ(複数のビジョン) |
| −ビ |
ビで終わる言葉も複数形だが、招待する際にのみ使われる。例えば、リオシビは神を意味するが、それは神を呼んでいる時にのみ使用される。すでにそこに神がいる場合はリオスボとする |
| −イ |
いくつかの典型的な語は語尾にイを付けることで過去形とされる。例文:カノイ(繋がった)、チョカイ(洗った) |
| −ション |
ションで終わる言葉は命令形となる。例文:ヨカ ヨカ シャマション(私に知恵をくれ) |
翻訳に関する注記
この用語集はSambo Kushi Ayahuasca Retreatにて使われている教本「Sambo Kushi Ayahuasca Retreat 02/06/2018」からの抜粋である。
本来記されていたもの以上に、私が個人的に聞き取ったものを多く書き加えてある。当テキストの著者から直接聞き取ることにより一貫性を保ってはあるが、本対訳の全責任は訳者にあることを注記しておく。
シピボ語に書き言葉は無いため、スペイン語の発音規則を用いてアルファベット表記するのが慣例である。しかしスペイン語表記では多くの日本人に伝わらない上、シピボ語とスペイン語の発音が必ずしも互換的であるわけでもなく、スペイン語発音をそのまま日本語に変換することはナンセンスと考え、訳者は本テキストの著者から直接発音を聞き取り、それを日本語話者に伝わるようカタカナで表記することを試みた。
しかしどうしても日本語とシピボ語では発音の互換性がとれない場合が多かった。日本人の発音が彼らにどう聞こえているかは知る由もないが、少なくとも彼らが同じと感じる発音が日本人にとって複数の異なった発音に聞こえることがある。例えば、オとウ(例:オィはウィとも聞こえる)、ラとジャ(例:ラロはジャロとも聞こえる)、ラとジャとタとダ(例:ラマはジャマ、タマ、ダマとも聞こえる)、ヨとユ(クユはクヨとも聞こえる)、シャとシュとショ(シュマンはシャマンともショマンとも聞こえる)、ンが付くか付かないか(シナンはシナとも聞こえる)。このような事情があるため、このリストはあくまで学習やコミュニケーションの取っ掛かりであり、真の学習は現地で行われることを前提としている。
翻訳者:梶 智就