植物との繋がりを示す鏡:夢の役割とは

シピボ族のヒーリング体系(シャーマニズム・ベヘタリズム)において、夢は植物との繋がりを示す鏡です。特に、ディエタ中はアヤワスカを飲んでみるビジョン同様、夢の内容がディエタの進み具合を示す指標となります。

 

では、シピボ族のヒーラーたちは夢をどのように位置付けているのでしょうか?植物はどのようにして修行者の夢に現れるのでしょうか?

 

本ブログでは、1)夢の役割 2)修行者がみたある日のビジョンと夢 について記述し、シピボ族における夢の位置付けと夢を通じて植物がどのように繋がってくるのかをご紹介します。

 


1)シピボ族のヒーリング体系における夢の役割


植物を一旦身体に入れると、彼らは様々な方法で修行者と繋がろうと試みてきます。結果、ディエタが進むと身体や精神に微細な変化を感じるようになりますが、その繋がりを実際に「見る」ことはできません。

ではいかにして植物との繋がりを「見る」のでしょうか?

 

この身体や精神におこる微細な変化を見るための「媒体」が、アヤワスカを飲んでみるビジョンであり寝ているときにみる夢なのです。

 

そして、シピボ族のシャーマニズム・ベヘタリズムの修行者にとって、アヤワスカを飲んでみるビジョンと夢は繋がりがあるもとして理解されます。以前、シャーマンのアルマンドに夢(=スペイン語でsueño)について尋ねたら「ビジョンのことですか?」と聞き直されたことがあります。

 

特に、ディエタ中は、媒体としての夢の重要性が顕著になります。

ディエタ中におこる最も顕著な変化のひとつに、見る夢の質の変化と夢の中での意識の明晰化を挙げることができるでしょう。従来見たことがないような不思議な夢を見るようになり、ディエタが進むほど見た夢を覚えていられるようになるのです。

参考:体験談#2:ディエタ体験記 植物療法とシャーマニズムの基礎訓練 (3/4)

http://nativesoon.com/blog/2466/

余談ですが、以前、チベット密教の修行者が「最高の瞑想とは、夢の中で行う瞑想である」と語っているのを聞いたことがあります。

この言は、コントロールが効かない夢の中で意識の明晰さを保てるだけの瞑想修行をつめば、死の瞬間でさえも意識の明晰さを保てるはずだという考えを反映しているものと思われます。密教の修行者にとっての夢見は、死の予行練習とも言い換えられるのです。

 

チベットの修行者たちは解脱のために死の予行練習である夢見の行に励むようですが、シピボ族のシャーマンたちは、植物から受け取るメッセージを見逃さないために、夢見の修行に励みます。特に、ディエタ経験の豊富なシャーマンの夢を観察し記憶する能力には目を見張るものがあります。

 

このように、シピボ族のヒーリング体系における夢とは、アヤワスカを飲んでみるビジョン同様に重要なものであり植物による微細な変化を“見る”ための媒体であるということを押さえておきましょう。

 

 


2)修行者がみたある日のビジョン


ここで、植物が夢やアヤワスカのビジョンを通じてどのように修行者と繋がってくるかを示す具体例をご紹介します。

アヤワスカのセレモニー明けに、NATIVE SOONのキー坊がこんな夢をみたと語り出しました。

目の前にピリピリの束が置かれていたので近づいてみると、近くにピリピリを引っこ抜いた穴があった。穴の中を覗くと、中から人魚がでてきてこっちをみてた。

以前ブログで紹介した「シャーマン修行:ディエタとは(http://nativesoon.com/blog/1785/)」で、ディエタをする植物の選択方法には、①植物が修行者に知らせる ②師匠が授ける ③自らの直感や獲得したい効果で選ぶ の3つがあると記述しました。

上記の夢の事例は、①植物が修行者に知らせる方法に該当します。

 

シピボ族の間でPiri PiriまたはWaste(シピボ名:ピリピリまたはワステ  学名:Cyperus articulatus)として知られるこの植物は、少なくとも40種はあると考えられており、用途に応じて様々な使い分けがなされます。尚、下の写真はそれぞれ異なるピリピリですが、見た目の判別は困難です。(写真下左:Kene Waste 写真下右:Nui Waste)

このピリピリは、主に香水としての匂い付けやビジョンをみる目的で使用され、愛についての教えを授けるプラント群の総称「ワルミ(=愛)」に分類される植物です。

 

そして、NATIVE SOONが共に働くシャーマン・ミカエラは、数少ないワルミの植物のスペシャリストなのです。

キー坊がみた夢について話すと、ミカエラはこう答えました。

ピリピリがあなたを呼んでいます。アヤワスカのセレモニー中、私(=ミカエラ)を通してあなたを見たピリピリが、あなたを助けられると感じ取って夢にでてきたのだと考えられますよ。人魚は、ワルミの世界に属する精霊です。

このように、植物の修行が深まるとシャーマンを媒体としてそのシャーマンが契約関係をもつ(=ディエタしたことがある)植物の精霊が、修行者におりてくることがあるのです。

科学的な検証は極めて困難な領域ですが、シピボ族のシャーマニズム・ベヘタリズムでは、こうした事例に事欠きません。

これらの事例は、シピボ族のヒーラーたちが、アヤワスカでみるビジョンと夢は繋がっていると考えること、夢=植物との繋がりを示す鏡だと考える背景を伝えているのではないでしょうか?

 


まとめ


以上、シピボ族のヒーリング体系における夢の重要性についてご紹介しました。

 

夢の役割については様々な解釈がありますが、考えてみれば不思議なものです。私たちは人生の大半を眠っているにも拘らず、夢について意識をむける機会は殆どありません。

 

科学の世界では、夢をコントロールし明晰夢をみるための有効な手法が証明されつつありますが、この研究が目指すのは「夢での“練習”による身体能力の向上や悪夢障害の治療などへの応用」だといいます。

「夢をコントロール」する有効な方法が判明:研究結果

https://wired.jp/2017/11/10/lucid-dream/

シピボ族のヒーラーたちは、植物の修行を通じ夢の中でも意識の明晰さを保つことで、現実世界でのヒーリング能力を開発・発展させているのかもしれません。