アヤワスカの世界 #1

アヤワスカ [学名:Banisteriopsis caapi (Spruce ex Griseb.)]:蔓植物, キントラノオ科蔓性木本。

英名、カーピ・イエージェ。ブラジル名、カーピ・ヤヘ。

用途:幻覚症状を起こすことで有名。薬用としては局部麻酔、記憶力の増加に用いられる。アマゾン地方、西部の熱帯雨林に成育する。古く、インカ帝国のときから知られ、インデイオが広く用いていた。科学的にはリチャード・スプルース(1817〜1898)の現地における調査が初めてで、その後、広く知られるようになった。本種以外にも、インデイオが同じ薬として用いるものに4種が知られている。

(橋本梧郎『ブラジル産薬用植物事典*』)

Photo: Ayahuasca Vine by Paul Hessell on Flickr


シピボ族におけるアヤワスカ


アヤワスカとはアマゾンの森に自生するキントラノオ科 (学名:Malpighiaceae) の蔓植物 (学名:Banisteriopsis caapi)です。アカネ科 (学名:Rubiaceae)のチャクルーナ(Chacruna, 学名:Psychotria viridis)の葉を加え数時間煮つめた混合液も同じくアヤワスカと呼ばれています。西洋の薬理学的には「幻覚剤 (hallucinogen)」に分類されます。

一方、シピボ族の治療儀礼の中では、シャーマン(onanya)が植物の精霊とつながり、病を癒す目的で使用される薬用植物です。シピボ族は、アヤワスカにチャクルーナの葉を加え、アヤワスカ茶として摂取します。

シピボ族の最初の祖先は、アヤワスカのことをNISHI(ニシ)と呼んでいました。これはロープとか蔓の意味で、「アヤワスカそのもの」を指します。一方、飲料用に準備された「アヤワスカ茶」のことは、シピボ語でONI(オニ)と呼びます。

近年では、両者の区別はせず、シピボ族は「アヤワスカ(Ayahuasca)」の最初の「A」を強く発音し、Áyahuascaと呼びます。

シピボ族の創世神話によれば、天上には天の川・母なるアナコンダ”Ani Ronin”が住む精霊たちの世界があり、水と太陽を結ぶ虹が橋となって、天上と地上を繋げていると伝えられています。
そしてシピボ族の精霊信仰では、アヤワスカ茶を飲むことで、この虹をつたって植物の精霊たちが住む世界を訪問できるといわれているのです。

アヤワスカ茶はシピボ族の植物療法を支える代表的な治療薬です。シピボ族の植物療法では、このアヤワスカ茶と共に、病に効果がある植物を併用し、 現代医学が治癒できない心や魂を治療します。

アヤワスカ茶を飲むと、植物の薬効を教えてくれる精霊の世界と繋がり、 患者の過去・現在・未来、前世・来世にフォーカスし、まるで映画を見ているように病の心理的原因を直視します。

シピボ族のアヤワスカ茶は、患者に記憶力の増加と共感覚をもたらし、地球とすべての生き物に愛情の念を抱くことの大切さを教えます。

−引用元−

* 橋本梧郎/西本喜重 編著『ブラジル産薬用植物事典 (1996/04発売)』アボック社出版局

http://www.aboc.co.jp/bookstore/index.php?main_page=product_info&cPath=11&products_id=25

 

−アートワーク–

Top 画像:JOA BÉWA (2013) by Reshin Bima  → http://www.reshinbima.com/gallery/joa-bwa-2013

シピボ族のアーティストReshin Bimaによる作品です。作品の日本語訳は「花が奏でる歌」。別次元と交信する熟練のシャーマンが、アヤワスカの花の上に座りアヤワスカのメッセージを伝える様子を可視化しています。

文中画像:“Canto de la maestra” by Reshin Bima → http://reshinbimaarteshipibo.blogspot.jp/p/pintura-art.html

シピボ族のアーティストReshin Bimaによる作品です。作品の日本語訳は「マエストラの歌」

文末画像:ブログ記事より抜粋 → http://www.raisingmiro.com/2012/05/10/podcast-episode-31-shipibo-at-home-in-the-amazon/