アマゾンでエスプレッソ#第3夜:現地編 家を建てる
執筆者:矢吹 弓
先端技術の調査や製造業の市場戦略づくりなどを支援するフリーランスのコンサルタント。
’17にNATIVE SOONを共同で立ち上げ、ペルーのアマゾンと日本を往復しながら先住民のシャーマニズムや植物療法を調査しています。犬好き。
雨季の終わりにあたる6月のアマゾンは、気温25~35度・湿度80~90%の晴れと雨の日をくりかえし、気温がどんどんあがっていく。
赤道そばの直射日光を浴びながら、ぬるめの温泉に入り続けるような日々。
森の中ならまだしも、プカルパ近郊の集落はモーターや建設車両が泥道を走り抜け、埃まみれの熱風が舞う。
クーラーがない家の中はサウナ状態となり、家事をひとつ終えると100m走全力ダッシュ並みに疲れる。
日常生活を送るだけで、肉体を酷使する毎日だ。
こんな暑さに止めを刺すかのように、私たちが暮らすエリアの水の供給が止まった。
ある朝突然、水が出るはずの時間に水がでなくなって、今日でなんと10日目に突入する。
地域全体で進行する治水工事の影響らしいが、地元の人にいつ水が出るかを聞いてもそれぞれが違うことを言うので、復旧の目処はたっていないと考えていいだろう。
元々朝と夜の数時間しか水が供給されていないエリアではあったが、1日中水が出ない日がこんなに続くのは、数十年来のことのようだ。復旧の目処も不明。
そのため、ここ数日はバケツを持って近所まで水をもらいにいくのが日常になってしまった。
とはいえ、ここいら一帯は元々深い森が支配していた地域。水道が通っているだけでもありがたい。
私たちとしても、水を汲みに200m先の湖までいく森の暮らしに戻っただけである。
随分長い前置きになってしまったが、現地編の幕開けにふさわしいアマゾンの日常を感じたところで、アマゾンでエスプレッソ 現地編に突入しようではないか。
ようこそ、開発による自然破壊と野生とシャーマニズムが両立するカオスへ。
ここは自然をメディアに人間の様々な欲望が剥き出しにされる世界。
地球の裏側までくると流石に何もかもが違いそれなりの美しさがあるわけで、このカオティックな生態系を自分なりに咀嚼しながら伝えていければ本望である。
現地編の幕開けとなる本ブログでは、昨年建てた新居の話を口火に、開発途上にあるアマゾンの集落における日常を紹介していきたいと思う。
アマゾンで家を建てる
現地拠点となる家を見つけることは、アマゾン暮らしにおける長年の念願であり最大の難関でもあった。
信頼できる大家とコミュニティに出会えないと、泥棒も多いし、騙されて終わるからだ。
そして家探しに必要なこの2つの要素を満たすことが、ウカヤリ県一帯のアマゾンでは難しい。
活動が2年目にさしかかる昨年の秋に、私たちもようやく信頼できる日系人の大家とコミュニティに出会い、彼の土地に家を建てることになった。
人生初のマイ・ホームをアマゾンで暮らす日系人の土地に建てるとは夢にも思わなかったが、そのプロセスは学びと驚きに満ちていて、というかそもそも自分たちの手で家をつくることの素晴らしさがプライスレスすぎた。
そのプロセスや空気感を、動画にしてみたので先ずはこちらをどうぞ。
アマゾンで家を建てて驚いたこと
そのプロセスは驚きの連続だったが、先ず建てるひとが建材を調達する必要があるのに驚いた。
(こだわり派をのぞき)業者が一括して家づくりを請け負うのが一般的な日本とは違い、ここでは現場への運搬まで建て主が請け負うのが一般的だ。動画の冒頭の通り、私たちもコンクリートに混ぜる砂から調達した。
資材についても、荷台におさまらなければそのままひきずって運ぶ。日本ならソッコーで怒られるこの荒業は、ここの日常であることにも驚いた。
しかし最も苦戦したのは、「家の隙間」に対する感覚の違いである。アマゾンの人たちは、家の隙間は大体閉じればOKで、あとは誤差くらいに考えている。実際には、この隙間からおびただしい数の小虫たちが侵入してくるのだが、彼らにとっては「大丈夫」らしい。
度重なるお願いの末、大家さんに隙間を閉じる工事を頼んだものの、やはり数cmが埋まらない。「あそこまだ隙間空いてますよ」と指摘した時の地元のひとの「はあ?どこに隙間あいてんの?」的な驚きようにこっちが驚いた。
(写真左:工事前。少しわかりにくいが木材の継ぎ目部分は、ぜんぶ隙間 写真右:工事後。隙間をうめる工事を頼んだものの数cmの隙間だけ無視されたので、網戸をつめこんで処置した)
現地拠点完成!
そういうわけで、沢山の人びとの協力と好意の元に現地拠点が完成したわけである。
完成した家のドアには、大好きなシピボ族のアーティストにスピリットの絵をかいてもらった。
こうしてできた新居を拠点に、アマゾンの人びとの見事なブリコラージュを目撃していくわけだがそれは次回のブログに譲ることにしようと思う。まったく、アマゾンの暮らしはタフさと柔軟性を鍛えるための修行場である。
それでは、また。
…NATIVE SOON